アルバムのこと書いたよ。
やあやあ。オトウラアオイです。
やっと、オトウラアオイのファーストフルアルバム「唯、碧く」が完成しました。
オトウラアオイとしてソロ活動を始めるきっかけとなった「くゆり」から、リメイク作品、最新制作曲を含む11曲(配信版は9曲)が揃いました。始めからアルバムを制作するつもりで動き出したわけではなかったので、後々収録曲のバランスを調整することになりましたが、大人しい印象のアルバムになりましたね。まぁ僕の好きな曲調を集めたらこうなりますよ。これ以上何も考えなかったらバラードづくしのアルバムになっていたかと。
そもそも、ミニアルバムでもいいかなーっていう考えもあったんですよ。多分その場合シングル3作品と「栞」、「花譜香」にあと1曲というラインナップになっていたんじゃないかな。それだとね、既存曲と未発表曲が1:1の割合になっちゃって、物足りないじゃないですか。それに、人生で一度はフルアルバムを作りたかったんですよ。良い作家さんたちとの出会いがあったおかげで、制作に踏み切ることができました。この場を借りて改めて感謝をお伝えします。ご協力いただいた皆様、ありがとうございます。
さて、素人なりに収録曲を含め、曲順などもアルバムとしてのまとまりを考えたのですが、いかがでしょうか。その点についてうまくいっているかは、アルバムを聴いていただいた皆さんの判断に委ねたいのですが、制作するうえで心がけたのは「全曲シングルとしてリリースできるような曲」ということ。「はじめに」と「あとがき」に関してはアルバムの最初と最後を意識して制作した曲のため除外しますが。あと、「シングル曲」というよりは「両A面シングルの2曲目」みたいなイメージの曲もありますけどね。あくまで僕の中での話ですが。
ちなみに、シングル曲を意識して制作したのは、サブスクや配信が広く利用され、アルバムの流れではなく1曲単体で聴かれるている現在の音楽事情にあわせた…というわけではありません。聴いてもらうための仕掛けも全くないです。単純に、シングル曲を集めたような、いわゆるシングルコレクション(世に言うベスト盤とか)が好きなんです。ポップでキャッチーで大衆的なものが大好き。アルバムを制作するうえで、それはどうなの?って思われそうですけど、ルールとかセオリーはどうでもいいんです。それに縛られるのはナンセンスだし。それでも、それなりにまとまりを考えているからこそ「はじめに」と「あとがき」はつくったんですけどね。
とりあえず、このアルバムを朝から聴くのはオススメできません。「よっしゃー!テンションぶち上げていくぞー!!」という曲がメインではないので。それよりも寝る前に聴いてもらうほうがいいかもしれませんね。「ラブストーリー」とか「howling」もあるので変にテンションが上がっちゃって、眠りを妨げる可能性もないとは言い切れませんが。じゃあ結局いつ聴くのがオススメなんだよというツッコミが聞こえそうですが、お好きなように聴いていただければ…と逃げさせていただきます。結局のところ、どんな聴き方をするか、そもそも聴くか聴かないかなんて、人ぞれぞれ自由なわけですから。ただ、どれか聴いていただけるのであれば、1つでもお気に召していただけたら、これ以上の幸せはないです。
せっかくなので、アルバム収録曲各曲のセルフライナーノーツを残しておこうと思います。
読まなくても問題ないけど、読むことで楽しみ方が増えるかな、と思います。
1.はじめに
アルバムとしての構想が固まってきてから制作することを決めました。アルバムとしてまとまりを出すためにどうしようかと考えたとき、最初と最後にインストゥルメンタル曲を用意しようかという考えも一瞬よぎったんですけど、その案は即ボツにしました。いちリスナーとして、インストゥルメンタルは苦手なんですよね。歌がない曲だけのものを聴くのに慣れてなくって。あと、正直「曲数かせぎ」みたいな印象もあったりして。それで、インストゥルメンタルじゃなくて、ちゃんと歌が入っているものにしようと思ったんですけど、Plastic Treeの「インク」とか、西野カナさんのアルバムを思い出して、リスペクトの意味も込めて真似させてもらいました。
まず、オープニングにふさわしい曲にして欲しくて、イントロを長めに作ってもらいました。ここから段々アルバムに入っていってほしいなって思います。僕はイベントが始まるまでの時間を楽しむ傾向が強くて、イベントが始まると「あと○分で終わっちゃうなぁ…」とか考えちゃうタイプなんです。だから、そんなことは考えずに、「今はちゃんと今を楽しもう!」って自分に言い聞かせる意味も込めて、こんな歌詞になりました。言いたいことは「砂時計」とほとんど一緒です。
2.くゆり
蒐集家盤では2曲目に配置された楽曲であり、オトウラアオイ名義としては初の楽曲になります。アルバム収録にあたり、発表した当時より1音キーを上げて歌をリレコーディングしました。それに伴いミックスも改めています。イントロ部分もカットしたバージョンになっていますが、イントロはライブで歌う際に歌い出しがわかるように後付けしてもらったものなので、実はこっちが本来のバージョンだったりします。
この曲、最初にデモを作っていただいた時より、だいぶキーを上げてもらったんです。何音上げてもらったか今となっては忘れてしまいましたけど。当時はあのキーでいこうと決めて完成させたわけなんですが、聴き返しているうちにモヤモヤしちゃって。歌下手だなぁ…録り直したいなぁ…って考えて。それで試しにキーを上げてみたら「こっちのほうが良くない?」と思って更にキーが上がった形で録り直しました。
また、前後の曲の並びを考えてイントロをカットしたバージョンを採用しました。
歌詞は体験した別れをテーマにしています。
別に死別とか、そういう永遠の別れではないんですけどね。今まで自然に顔を合わせていた人と気軽に簡単に会えなくなるっていう話です。学校の卒業と近い感覚でしょうか。クラスメートって、登校すれば良くも悪くも顔を合わせるじゃないですか。でも卒業すると会えなくなる。今まで当たり前に会えていたのに、それが当たり前じゃなくなって寂しくなる気持ち。
自分が学生の頃はそんなこと一切思わなかったんですよ。むしろ卒業式で泣いている人の気持ちがわからなかったくらい。「寂しいなら会えばいいじゃん。会わないならその程度の気持ちでしょ?」って。冷めてますよね。
でもそんな僕も、環境が変われば、新しい場所での付き合いが多くなることや、疎遠になっていくんだなってだんだん気づいていくんです。特に大人になると「会いたけりゃ会えばいいじゃん。」っていうのも、より難しくなってくるじゃないですか。仕事だ家庭だって。人それぞれ生活事情って絶対あるから。それに、今の時代コロナの影響もありますし。
昔と比べればネットを介してとか、テレビ電話とかあるから、遠くにいたって顔を見ながら会話もできるけど、それはなんだか違って。実際に会いたいわけです。「くゆり」制作当時はひと月にひとり、またひとりと別れが続いていたので、とても辛かったです。あれから時間は経ちましたけど、未だに寂しくなります。連絡は取り合えているので、会いたいですねぇ。
3.砂時計
蒐集家盤としては3曲目に収録された曲ですが、配信版では1曲目を飾っています。
一応リード曲という扱いになりますね。リード曲を決めるのも少し悩んだんです。「ラブストーリー」や「howling」だと印象が変わっちゃうし、「栞」や「花譜香」は昔の曲のリメイクだから何か違うなって思って。となると、「イロトリドリノ」か「砂時計」の二択になるわけです。「イロトリドリノ」は印象が甘すぎるかなぁ…アルバム全体のイメージとは異なるなぁ…ということで、僕らしく少し湿り感があるこの曲をリード曲に据えました。リード曲だけど、良い意味で派手になっていなくて、よろしいのではないでしょうか。
この曲も阿部さんの作曲・編曲なんですけど、譜割りは自分でおこないました。いつもは仮歌も用意してもらうんですけど、ガイドメロディを聴いて、言葉の響きも考えて、こういう形にまとまりました。
歌詞は、ラブソングではないんですけど、そういうふうにも聞こえるんでしょうか?砂時計をひっくり返すように、大事な人との大切な時間を何度でも繰り返したいという歌になっています、僕が友達と遊ぶときもそうなんですけど、約束して、会って、ご飯を食べて、遊んで、「またね」って言ってまた約束をするわけです。でも、どんなことが原因になるかわからないけど、それも出来なくなるような…繰り返せなくなる日が来ちゃうんだよな…嫌だな、悲しいなって。そんなことを考えてて、それを歌詞にしました。
とってもネガティブではあるけど、いつか来る別れを知っていても、いや、知っているからこそ、今はたくさん笑っていたいし、楽しい時間を過ごしたいねって。それこそが一番伝えたいことだったりします。
4.bouquet
2ndシングルとしてリリースした曲ですが、地味に苦労しました。僕の声質ってマイナー調の曲に合う声らしくって。だから、こういうハッピーなオーラに溢れた曲のトーンに合わないんです。それはもう絶望的に。歌っているときは「このテイクはいいかも!」と思っていても、聴き返すと「あっれ~?」って。笑
とりあえず、上手に歌おうというよりは、そういったニュアンスを大事にしていて、とても大変でした。
聴いて分かるとおり、ウエディングソングなので、実際に披露宴で歌うことを想定して制作しています。なので、体感で長く感じないように、サビ始まりでキャッチーにしつつ、構成も少なくしました。前奏だけ少し尺がありますけど、そこは作曲を依頼した時点で決めていることでしたし、間奏も長くならないようにオーダーしました。だって聴く側も歌う側も嫌じゃないですか?変な「間」があると。
曲調をアップテンポにしているのもそれに近い理由があります。バラードで感動的な1シーンを演出するぞ!…なんてこともほんの少し考えましたけど、それって歌う側のエゴが全開すぎやしないかなって思ったんです。有名な歌手の方だったり、大ヒット曲とかならまだしも、素人の知らない曲なのにバラードって退屈だったり、しんどいなってなりません?先述しているように僕の声質のこともありますから、バラードなんて歌ったらせっかくのお祝いの席がしんみりしちゃうじゃないですか。それは大変いたたまれないし、申し訳ないわけです。
この曲はお祝いしたいという気持ちが1番にある曲なので、こういう多幸感溢れる華やかな曲にしてよかったなって思います。
実際に歌うことが決まっているわけでもないし、勝手に作っただけですが、歌ってお祝いできるといいなぁなんて考えています。披露宴をお考えの皆様、ご一報ください。
5.イロトリドリノ
「bouquet」から続いているようなイメージで配置しました。この曲はクレジットを見ていただくと分かりますように、阿部さんとの共作となります。作曲の依頼をするとき、この曲だけに限らず「作詞先行」で制作をしているんですけど、どうしても文字数が合わない部分が出てくることもあるんです。そういう時は歌詞を微調整するんですけど、僕の中で「この言葉はこう聞かせたい」というイメージがあるので、そういった部分はメロディも変更させてもらっているんです。それでクレジット上は作曲の部分に僕の名前も記載しているんですけど、ほぼ阿部さんの作曲と捉えてください。
ちなみに、先述しているように、メロディの良し悪しではなく、言葉をどう伝えたいかということに重きを置いているため、歌い回しを変更しています。また、この曲もニュアンスを重視しています。歌い尻ひとつにしても、テイクを聴き比べて、「この息の抜き方もいいけど、この歌詞とこのタイミングならこっちかな」といった感じで。セルフプロデュースなので、どのテイクにOKを出すか悩みました。
そうそう、聴いていただいた方ひとりひとりに、「イロトリドリノ」に続く言葉を当てはめてもらいたいですが、どんな言葉を思い浮かべるのか聞いてみたいものですね。
歌詞を読んで頂ければ何か当てはまるかと思いますが、この曲の歌詞でこだわった部分は、Cメロの『だけど色を添えていこう』の「だけど」の部分になります。色褪せていく…「だから」色を添えるのか、それとも「だけど」なのか。どちらの言葉を使うかで全然意味が変わってきますよね。壊れるから大事にするのか、そんなこと関係なしに大事にするのか、みたいなことです。いつか忘れていくから、死んで別れが来るからと分かっていても人は人を愛するものですし。そういうことを考えていると、色褪せていくと分かっていても色を添え続けていきたいなって思って、「だけど」と歌っています。
また、もともと12月にアルバムを発売する予定だったため、冬の要素を加えたくて「イルミネーション」という言葉も織り込みました。
6.栞
アルバムの中盤にあたる曲です。タイトルを決めた時からそうしようと決めていました。「しおりを挟んで後半に向かう」っていう洒落ですね。また、お気づきの方も多いかと思いますが、この曲を中心にしてシンメトリーになるように楽曲を収録しています。「くゆり」、「bouquet」、「あゆみ」と制作していくうちに、アルバム制作が視野に入ってきて、収録順をシンメトリーにしようと思いつきました。なので、収録予定の曲とタイトルを並べながら、同時にアルバムのトータルバランスも考えて制作しました。
ほとんどの作曲を阿部さんに依頼しているのですが、この曲の作詞・作曲は僕です。このアルバムには僕が昔作った曲のリメイク作品もいくつか収録していまして、「栞」もそのうちの一つなんです。今回の収録にあたり構成も変えて、歌詞もすべて書き換えました。しかし…この曲は他の曲とは違った大変な部分がありました。
というのも、この歌詞は亡くなった父のことを歌っているんです。きちんと父の最期を看取ったんですけど、病気のせいで、まるで父じゃないほど痩せ細って、もう本当に、別人のような顔になっていたんです。それで未だに実感がわかないんですよね、父が死んだってこと…。別人と入れ替わっていたんじゃないかって思ったりして。でも、何も言わずに家族をおいて消息を絶つ人ではないんですよ。とても家族思いの人だったので。ということはやっぱりあれは父の姿で間違いなくて、もう父はこの世にいないんだなぁって…。
昔の曲を引っ張り出して聴いた時に、この曲で父の事を書こうと、ふと思ったんですよね。以前の歌詞は恋愛について書いたものだったんですけど、今残しておきたい内容でもなかったし、本当に偶然、書き直して歌おうって思いました。で、もともと7分以上ある曲だったので、余分な所を削って完成させました。レコーディングのときはそうでもなかったんですけど、歌詞を書いているときは涙が溢れてきて大変でした。自分で父の事を書こうって決めたのにね…。歌詞を書いていて涙が出たのは初めての経験でした。なので、レコーディングのときも「短期決戦だ!」と思って、泣かないうちに終わらせようと思いましたし、この曲は余計に上手く歌おうというよりは「気持ちを込めよう」と思って、何テイクも録ろうとはせず、少ないテイクで決めようとレコーディングに臨みました。レコーディングでは泣かずに済みましたけど、ライブで歌うことになったら、ちゃんと歌えるか自信がありません。
7.ラブストーリー
今回のアルバムがわりとパーソナルなものになったので、この曲は異色ですね。アルバムをこんなにパーソナル色が強いものにするつもりはなかったんですけど、この曲の歌詞は完全なフィクションとなっています。
曲調については他の曲もそうですが、自分が好きな曲を詰め込みたいと思って制作をしていて、この曲を用意しました。ロックなのに歌謡曲のメロディーの曲、好きなんです。捨て曲ではなく、ジャンルがガラッと変わったような曲を差し込むことでアルバムのアクセントになればと思いました。歌い方も明らかに変えていますし、やりすぎかな…と思いましたが、曲ありきで歌唱スタイルを変えているので、これで良かったと思っております。
最初にいただいたデモではロッカバラード寄りのアレンジでした。そのアレンジでも充分かっこよかったんですけど、アルバムのバランスも考えたときに疾走感が欲しいと思い、このアレンジにまとまりました。
この曲が収録されたことで「コイツの目指す音楽性がわからない。何がしたいの?」と思われた方も多いかもしれませんね。ですが、先程書いたことと重なる部分がありますけど、「やりたいように好きな音楽をつくる」というのが僕の考えだったりするので、何でもアリ感を楽しんでいただきたいです。僕の趣味嗜好で左右されるので、もしもハマったら「チルいラップ」の音楽をやり出すこともあるかもしれませんね。おそらくそれは無いとは思いますけど。笑
歌詞は、歌謡曲なら女性視点の歌詞がベタかなと思ったし、その方がフィクション感も出るかなって。僕自身が女々しいタイプなので真逆な人をイメージして書きました。泣いてすがるような人ではなく、強い女性をえがきたかったんですよね。最後の一行もあるので、実はひっそり一人で泣いてたりもするんでしょうけど、男の前ではそういう姿は見せないような女性。そんな印象を持ってもらえたら幸いです。
ちなみに、今回のアルバム以降も形にしたい作品のアイデアがありまして、この曲はその作品の実験を兼ねたものだったりもします。つまりは完全フィクションのコンセプト作品ということになりますね。今回がパーソナル寄りの作品になったので、その反動でしょうか。そちらも楽しみにしていただければ。
最後にタイトルについても触れておきますね。皆さん、タイトルを見て甘甘のラブソングをイメージしませんでしたか?アルバムで言うと「イロトリドリノ」みたいな。曲順通り聴いていただいていれば、よりそう思わせられると考えたんですよ。期待通りのものを提供するのも好きなんですけど、あえて期待を裏切るというのも好きなんです。
そもそも「ラブストーリー」って綺麗なものばかりじゃないじゃないですか。二股とか不倫とか略奪愛とか、そういうものってドロドロしてるけど、「ラブストーリー」ではあるわけで。そう思ったらこの曲調、この歌詞で「ラブストーリー」というタイトルもしっくり来ますよね。
8.howling
元々は『戯言』を意味する「rubbish」というタイトルで制作していて、違うメロディと歌詞の曲でした。編曲をお願いするまでに結構長いこと寝かせていたのもあってか、段々「これでいいかなぁ」って思うようになって。それで別の歌詞を書いてみて、その中にこの形になる前の「howling」の歌詞があったんですよ。テーマは一緒だったので、その歌詞と「rubbish」をくっつけてみたらどうだろうって調整してみたら、こっちのほうがしっくりくるなと思って、この歌詞が出来上がりました。その際にせっかくだったので作編曲を丸々お願いして、元々想定していた曲より良いものになりました。
全体的にまったりした曲が多かったので、アクセントとしてテンポが速い曲を入れたかったんです。「ラブストーリー」は歌謡曲とロックを融合した曲調だったので、「howling」は雰囲気の違うものにしたくてEDM系の曲にしてもらいました。
歌詞は身近な大切な人や、自分に対して歌っています。他人に認められたいのか?誰かを見返したいのか?って考えるきっかけがあったんですけど、そんな気持ちは全くないなって改めて認識したんですよね。誰かに認められたくないわけでもないし、認められるのであれば嬉しいに決まってるんですけど、それが最優先ではないな、と。何より大事なのは僕を好きでいてくれる人や、自分自身が誇れる自分でいることが大事だよなって思うんです。
願いや理想は、例え簡単に叶わないとしても望み続けるしかないし、望まないことには手に入れることや掴むことはできないと思ってて。当たり前だけど、望むだけでは意味がなくても、望んでいないとチャンスに気付けず取りこぼしちゃうと思うんですよね。だから『吠えて響かせよう』という一節をサビに持ってきました。
『泣かないで』という言葉は、側にいる人に対して悲しい思いをさせないってことはもちろんですが、自分自身に対して鼓舞するような気持ちだったり、『会いにいくよ』というのも、誰かに対してというよりは、思い描く理想の自分・未来の自分への言葉だったりします。そんな前向きな『僕がいる』んだから、泣いてる暇なんかないですよね。いずれ死ぬし、いつ死ぬかわからないんだから、望むことは一つでも多く叶えたいものです。
基本的にネガティブだけど、たまにはこんな強気な歌詞があってもいいですね。あと、個人的に歌っていてとても気持ちがいい曲だったりします。サビの音域があっているんですかね。まだまだ鳴り止まないつもりだし、というかまだどこにも鳴り響いていないので、どうぞよろしくお願いします。
9.花譜香
これで「カフカ」と読みます。「変身」の著者で知られる「フランツ・カフカ」氏から着想を得ました。不条理が個人を襲った「変身」って、コロナ禍で大変になった僕たちにも当てはまるかな、なんて思ったのです。みんな大変なんだけど、まるで自分だけが大変になったような感覚を覚えませんでしたか?まぁ、「変身」とは話は違いますし、直接的な意味合いはありませんけどね。
歌詞ではコロナ禍を夜に例えていて。いつか夜明けは来ると信じているんですけど、コロナ禍以前と以後では変わってくることもあって、しんどいことも多いですよね。こどもとか、友達の作り方がわからないってニュースでも言ってましたし。
ちょっと大変だったりしんどい時に、ひとりじゃないんだよってことを心の片隅に置いていて欲しいなって思ったりしました。もちろん、すべてを理解できたり、救ってあげられることはないんですけど、少しでも気持ちが楽になってもらえたらって思います。そういう寄り添える歌詞にしたくて。
でも『優しい世界を夢見た/君にも触れる冷たい雨』という一節があるように、無責任に大丈夫とも言えないし、大変なことも傷つくこともあるんだからねってところはちゃんと伝えようと思いました。辛いこと・苦しいことも生きていれば必ずある、それって避けて通れないことじゃないですか。それを乗り越えていきたいですね、という気持ちです。
あと、コロナ禍じゃなくても個人個人大変なことってあると思うんです。そういった大変な状況を肯定するつもりはないけど、「そういう状況にならなければ見えてこなかったこと、気付けなかったものもあるはずだよな、悪いことばかりに目が向いてしまうけど、いいこともあるはず。それが何かは人ぞれぞれかもしれないけど、考え方をポジティブにしたいね」という気持ちから、『気付いて/ここに咲く花を/知って/ここにしかない景色を』という歌詞を書きました。
ライブをする予定はないと常々発言していますが、ライブも想定した曲になっています。なんだかんだでそんな風になっちゃいました。この曲はサビをお客さんに歌って欲しくて。今の状況が落ち着かないと無理ですが、昔ってサビをずっと合唱する曲があったりしたんですよね。アレ、すごく憧れていて。歌詞の内容ともリンクしているので、是非叶えたいことのひとつです。あと、この曲って銀テープが似合いそうじゃないですか?アンコールとかラストでパーンって飛ばすアレです。やってみたい~。
そんな希望に溢れた曲なので、配信版ではラストに配置しました。よりお金を出してCDを買っていただく方には、もっとパーソナルな「あゆみ」で締めようと考えました。CDを買おうとまでは思わないライト層の方に「あゆみ」で締める流れは、暗い印象を持たせちゃうかなっていう懸念もあったので。こういうポップな曲で明るく終わるっていう表現もできてよかったです。
ちなみに、サビの『手を伸ばして』は僕もお客さんも互いに手を伸ばしたいという意味です。欲しがっていきましょ、手を取っていきましょって意味で。これもただの希望ですが、ライブができた暁にはお客さんと一緒に手を挙げたいです。うん。やっぱりライブしたいんです。したくないわけないじゃないですか。ライブでしか見れない景色(花)を見せて、メロディーを紡いで、香りのように忘れられない何かを感じ取ってもらえたら、初めてこの曲がタイトル通りに完成するんだと思います。
10.あゆみ
蒐集家盤では実質ラストを飾る3rdシングルです。本来はこういったバラードでアルバムを締めくくりたいという思いがありました。むしろ、そう在るべきとすら思っている時期がありました。L’Arc~en~Cielの「HEART」というアルバムに衝撃を受けまして。あのアルバムは名バラード「あなた」で終わるんですよ。それが強く影響しているんだと思います。中学生の頃親友と夜通し見たL’Arc~en~Cielのライブ映像でも「あなた」をラストに歌っていて、ライブでもバラードで終わらせなきゃいけない!と思っていたくらいです。
それで「あゆみ」でクロージングするつもりだったんです。でも、CDと配信の2種類を用意しようと考えたときに、それぞれで印象を変えたいと思って、一部曲順を変更して、CDである蒐集家盤では「あゆみ」がラストになるようにしました。「あとがき」があるので、ラストと言っていいのか微妙なところですけどね。
タイトルは「歩み」を表すものですが、なぜ平仮名表記かというと、文字の見た目にもこだわっていて、漢字を含む「歩み」だと、なにか嫌で。感覚的なものなので説明しにくいんですが、タイトルとして色んな表記で書き出したとき、平仮名のほうがしっくりきたんですよね。あと、スピッツの歌のタイトルにも女の子の名前がつくものがいくつかあって。一見女の子の名前っぽく見えるのも良いなぁと思い、「あゆみ」にしました。
ちなみに、タイトルだけじゃなく、歌詞に関しても漢字にするか平仮名にするかカタカナにするか英語にするか…と考えます。歌詞を見た時の印象や、曲の内容に合うように。
歌の内容については以前インタビューの答えていて、サイトに掲載しているので、そちらをご覧頂けると嬉しいです。
11.あとがき
「はじめに」と同じメロディーですが、少しずつ歌詞が違います。また、この曲はアウトロが長めになっています。『おやすみ』って歌っているのはライブを想定した歌詞だからです。ライブって大体夕方から始まって夜に終わるじゃないですか。だから、ライブが終わっても、「寂しいけど、またね。今日のこと思い出してね。おやすみなさい。」って気持ちで書きました。歌詞に書いてあるまんまです。笑
タイトルは丁度いい言葉が見つかってよかったです。「入口/出口」とか、「イントロ/アウトロ」みたいなのも候補にあったんですけど、中盤に「栞」もあるし、本みたいにしたら面白いかもしれないと思って。それで「あとがき」というタイトルにしました。だから理想としては本のような特殊な外装のCDにしたかったんです。予算がなくて断念しましたけど、いつか完全盤として製作できたらいいなぁなんて。
蒐集家盤と配信版でアルバムの印象を変えたくて、「はじめに/あとがき」は配信版には収録されていませんが、今後サブスクで配信されることになっても「はじめに/あとがき」は配信する予定はありませんので、何卒ご了承下さい。
ボーナストラックについて
蒐集家盤のみに収録したボーナストラックについても、ここで話しておきたいと思います。
告知やフライヤーを見た方は「はじめに」と「あとがき」のことをボーナストラックと思われた方が多いでしょうね。だったら成功です。そう捉えられるように書きましたから。CDを買っていただいた方に「他にも曲が入ってるじゃん!ボーナストラックってこれのことだったのか!」と喜んでもらうためのサプライズにしたかったんです。
でも、結局は「ボーナス」ですから。過度な期待は厳禁ですよ?あくまで「ボーナス」ですからね。
まずは無音が続いて、66曲目に収録された曲ですが、歌詞はなくて適当英語で歌っています。タイトルは一応「starry」としていますが、適当な英語(英語とも呼べないような言葉)なので中身はありません。昔聴いたCDに収録されたボーナストラックって、パンク調で何を歌っているか分からない曲だった記憶があるんですよ。たまたまそういう曲を聴いただけかもしれませんけど、それを再現してみたくて。スタジオやライブ会場で演奏しているものをテープレコーダーで録音したような音質だったら、もっと雰囲気が出せたかもしれないけど、ある程度は聴きやすい方がいいかなと判断して、こんな感じにしました。
オケはYouTubeに公開されているフリートラックから拝借しています。
(https://www.youtube.com/watch?v=F_LYKv05uSs&list=WL&index=23)
僕のボーカルが入っていなくてもかっこいいBGMですので、皆さんこちらも聴いてみてくださいね。
99曲目に収録されたのは「ハジメテノヒトprod.雨宮さらさ」です。こちらもYouTubeに公開されている歌に、別のメロディーと歌詞を乗せたものになります。
(https://www.youtube.com/watch?v=rgTC6ABHthQ)
シンガーソングライターの雨宮さらささんによる「シズルズル」が原曲です。それをそのまま歌うのは何の意味もない気がして。僕にはオケをリアレンジする力はないので、オケはそのままに、僕なりの解釈でメロディーと歌詞を改変することにしました。とは言ってもメロディーを作るのは難産でした。決してうまくいったと言い切ることはできないんですけど、原曲の雰囲気を壊さず、僕なりの歌が歌えたんじゃないかって思います。
歌詞は「ラブストーリー」と同じくフィクションですね。テーマは「初体験」です。お相手は年上の女性。聴いた方で自由にイメージしていただきたいですが、僕の中では生徒と学校の先生という設定で、淫美だけど、下品にならないように。そう心がけて書いてみました。こちらもボーナストラックのためミックスは自分で行っています。聴きづらい点はご容赦ください。
CDを買ってくれた方が少しでも「買ってよかった」と、少しでもお得感を持っていただけるよう用意したこちらの2曲。特殊な楽曲ですが、本編楽曲ともどもお気に入りの楽曲なので、原曲と併せて聴いていただけたら嬉しいです。
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